23話

 一頻り悶絶をし終わったリディアは、すくっと起き上がった。

「こうなれば、大団円しかないわね」

 あっさり方向を転換するリディア。
 リディアは諦めも早かった。

「?」

 イザークが奇怪な行動に伺う眼差しを送る中、リディアは改めて思案に耽る。
 逃げる選択肢がなくなった今、大団円としての攻略を考える。

(大団円に必要なのは…)

 攻略男子と良好関係は築く必要があるという事。
 だが、ここで気を付けないといけないのはフラグを立ててはいけない、もしくは立て過ぎてはいけないという事だ。

(チッ面倒ね……)

 リディアは面倒なことが大嫌いだ。

(大体、こっからが問題なのよね~)

 リディアが記憶にある序章段階はもうすぐ終わる。
 あと、一目惚れキャラが出てくるイベントが序章の最後なのだ。
 そうなれば、そこから先の本編の内容自体をあまり覚えていない。
 怒涛の親指高速連打ですっ飛ばしまくったわけだから。

(でも、大筋は解るわよね)

 代金返せレベルの怒りにまかせ意地になって一応全て攻略解説で答え埋めていったに過ぎないが最後までクリアはしている。
 どれも見たことある様なパターンのストーリーだったはずだ。
 なので余計に結果が見えて超つまらなかったのだ。

(まぁでも、結果が予想できるなら問題ないわね)

 そう考えた時にハッと閃く。

「そうだわ…」

(結果が解るなら、さっさと攻略男子の問題解決しちゃえばいいのね!)

 要は攻略男子の問題がいい感じで終われば良好関係は築ける。
 そして、

(答えが解っているなら答えを先に出して解決しちゃえば‥‥)

―――――フラグは立たない!

「!! …いける、いけるわ‥‥」
「?」

 イザークが首を傾げる。
 全員の問題を解決して、あとはさっさとこの王宮から逃げ出せばいい。
 その頃には魔法も使えてMPも増えて逃げきれるはずだ。

「よく考えれば、試験参加は好都合ね…」

 欲しかった魔法の技術も覚えられるはずだ。
 最近魔法を発動した子もいるのと、徴が学校に通っていない平民に出る場合もあるため聖女を決めるまでに勉強期間や試験が設けられている。
 この期間に魔法だけでなく色々な知識を学ぶのだ。
 そこでよくある攻略男子との交流で愛情レベルが上がり、その中で一番高い男子のストーリーに入っていって最終的に聖女の魔法に助けられて終わるみたいな感じだったはずだ。

(とにかくここに居れば…)

 そう、ここは倒れた原因になったような無茶をしなくても、知識や情報、そして魔法技術まで磨けるのだ。

(それに確か…)

「この聖女候補生は、王宮図書使えたりする?」
「はい、いつでもご利用可能にございます」

(やはりね)

 イザークの言葉にニヤリと唇の端を引き上げる。
 聖女試験に参加する者は、確か王宮図書で勉強することを許可されている。
 ジーク別邸にある図書以上に、もっと充実したラインナップで情報を手に入れることが可能になるのだ。これは中々に美味しい。
 それに技術向上の授業もある。
 魔法技術が上がればそんなに働かずして一つの仕事でも大金を得ることも可能。
 いや、ポーションとか何か作ったものを売って暮らしてもいい。
 何とでも楽して稼げるようになる。
 ここに居るだけでその魔法技術も得れるし、情報も知識も全て手に入れられる。
 てことは、少しでも早く魔法を特訓して力をつけておいて後は大団円をサクッと迎えたらその力を使ってサッサと逃げだせば…

―――― 夢のぐうたら生活を手に入れられる!

(いける、いけるわ!!)

 リディアの考え込む様相にイザークが伺い見る。
 そんなイザークの前でベットの上に仁王立ちする。

「ふっふっふ!これでこの世界の攻略みつけたなりよっ!!」

 こうして題名通りリディアは、
 つまらなかった乙女ゲームに転生したのでサクッと終わらすことにしました。